比較社会保障研究室(コータローの社会保障塾)
Comparative Studies on Social Security Systems (CSonScubed)

2025年1月27日「物価・賃金の変動と年金額改定の算定式」を掲載しました


ずいぶん遅れましたが、改めて、2025年の新年のご挨拶を申し上げます。
昨年5月に立ち上げたこのHPも、はや半年が経ちます。本年もどうぞよろしくお願いします。

昨年末にドイツ介護保険の最新の状況に関する小論文を掲載して以降、恒例の『はじめての社会保障』の第22版に向けての改訂作業に忙しく、今回が2025年初めての投稿になりました。

昨年は、2023年12月に閣議決定された<こども未来戦略>に基づき、子ども・子育て支援法等の大幅な改正や、雇用保険法の改正、マイナ保険証に伴う紙の保険証の廃止など、大きな改正が立て続けに施行されたことに伴い、記述の大幅な見直しが必要になりました。加えて、コラムの加除や数字の多い表に図を加えて理解を深める工夫を行ったほか、より読みやすくするために本文と図表の位置の全般にわたる見直しも行われたため、25年前の初版以来の大幅な改訂作業になり、この間、初版ゲラの校正に追われていました。

その作業の最後の仕上げとして、この1月24日に厚生労働省が公表した2025年度の年金額改定の資料を確認し、念のために公表されている諸係数を基に、自分で計算してみたところ、どうしても正確に数字が一致しませんでした。そこで、昨年も同じ経験をして、そのときは実務担当者に教示頂き理解できていたつもりが、今回改めて自分で算定してみてうまくいかなかったため、2004年に新たな年金算定方式が決められて以降の毎年の改定率を調べ直し、ようやく正確に算定できるようになりました。

私自身、かつて大学で社会保障論を講義していた当時は、学生が苦手な年金制度の理解を深めるために、一緒に計算していましたので、あるいは、同じように、年金制度の講義をしていらっしゃる教員や年金の専門家でも、こうした実務的な細部はご存じない場合やご自分で計算してみて苦労していらっしゃる方もあろうかと思い、一般の関心のある方への情報提供も含め、年金額改定についての簡単な小論をまとめましたので、掲載しておきました。


<物価・賃金の動向と年金額改定の算定式 PDF>

そして、この20年間の年金額の改定の経緯を表にしてみて、改めてこの間の賃金の伸びが壊滅的であったこと、それ故に年金額が<この20年間でわずか6.5%!>しか増えていないことを確認し、暗澹たる気持ちになりました。同じ改訂作業の中で、社会保障給付費のデータを更新した際に、「医療費」と「介護その他の社会福祉費」はどんどん伸びているのに対し、多くの国民の生活の基盤である年金総額の伸びが極端に低く、早晩、医療費に抜かれそうな趨勢にある背景を再確認した次第です。物価上昇以前に、何よりも、働く人の賃金をどうすればまともに引き上げられるのか、労働組合の基盤強化も含め、抜本的にこの国の経済と雇用は立て直さなければならない、と痛感しました。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です