2025年4月13日に「ドイツの外来保険診療の特徴とその改革ー2025年医療提供強化法を中心としてー」の論文を掲載しましたが、その際に予告しておいた保険医の需要計画の詳細な算定式について、資料がまとまりましたので、掲載しました。
上記の論文は、2025年医療提供強化法による保険外来診療の改革の分析が中心だったため、その前提となる保険医の適正配置の中核を成す操作概念である<需要計画>については、各種の算式表などの詳細は省略せざるを得ませんでした。しかし、今回、改めて、自分の中で長年懸案となっていた、保険医の需要計画の具体的な詳細について分析することができ、とても興味深かったので、別途資料として取りまとめてみました。
日本でも、ようやく開業医の適正配置の問題が議論の俎上に上っていますが、ドイツの保険医需要計画はすでに長い歴史と実績を有しており、その精緻な組み立てには学ぶところも多いのですが、政治的な問題は別にしても、以下の点で、直ぐに日本でこうした緻密な組み立ては難しいだろうと思います。
まず、ドイツの保険医は、家庭医と呼ばれる一般医(日本の総合診療医に相当)も含めて基本的にすべて4年〜6年の卒後研修を受けた専門医であり、専門医の位置づけが明確であることが挙げられます。
さらに、ドイツの適正配置基準を算定するプロセスで利用される保険医の診療報酬データは、そもそもその審査・支払が保険医協会によって行われているため、これに関する豊富なデータと経験が蓄積されていること、また、保険者である疾病金庫においても、診療報酬をめぐる当事者自治の一方として、豊富なデータの取り扱い経験があるのに加えて、1996年から開始された、疾病金庫間のリスク構造調整の運用を通じて、年齢階級別、性別などに応じた医療費に関する膨大なデータを有し、さらに2009年から精緻化された直接的な罹病率を用いたリスク構造調整の運用を通じて、疾病ごとの医療リスクに関しても膨大なデータを有している点が挙げられます。
このように、ドイツと日本では事情が異なる点がありますが、開業医の適正配置を考える時、とりわけ医師過剰地域での新規開業(保険医療機関の指定)を制限する措置を伴い得ることを考えると、ドイツのルールのような、緻密な算定枠組みが求められてくるものと考えられ、その意味で、とても参考になるものと思います。
関心のある方は、論文と一緒に、この資料もご覧頂けると幸いです。