比較社会保障研究室(コータローの社会保障塾)
Comparative Studies on Social Security Systems (CSonScubed)

2025年5月26日「ドイツの2025年新政権と連立協定から見る社会保障改革の見通し」を掲載しました



2025年5月26日2025年5月26日「ドイツの2025年新政権と連立協定から見る社会保障改革の見通し」をHPに掲載しました。
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2021年秋の連邦議会総選挙によって誕生した社会民主党(SPD)と緑の党、自由民主党(FDP)の3党連立政権(赤緑青の政党カラーを取って交通信号政権と呼ばれました)は、ショルツ首相の下で、コロナ禍からの出口戦略や2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻など、厳しい時代の転換点にあって、各政党の理念の大きな相違にもかかわらず、病院医療改革も含めて一定の成果を挙げてきました。しかし会期も後半に入ると、次第に各党の立場の違いから亀裂が大きくなり、調整に時間がかかり、あるいは政策決定できず、批判を受けることが多くなりました。

そうした状況がとりわけ財政問題をめぐって深刻化する中で、ついに2024年11月にショルツ首相がFDP党首リントナー財務相を解任し、FDPが政権離脱して連立は崩壊しました。そして2025年2月23日に連邦議会総選挙が行われ、この3党は歴史的な敗北を喫し、第1党に復帰したCDUのメルツ首相候補は第3党となったSPDの新たな党首クリングバイル氏との間で連立交渉を精力的に進め、CDU/CSUとSPDは5月5日に正式に連立協定に署名し、翌6日の2回目の連邦議会投票により、メルツ氏が過半数を獲得して連邦首相に選任されました。


今回は、すでに3年を超えるロシアの侵攻への対応、1月に誕生したアメリカのトランプ政権下での国際政治経済環境の激変、そして3年目に入った経済のマイナス成長からの立て直し、さらには移民問題を契機とした極右勢力の急伸張といった大きな困難を抱え、ドイツも正念場を迎えています。


こうした社会保障政策以外の最優先課題に直面した状況下ではありますが、医療や介護、年金などの主要領域も、それぞれ解決を急がれる大きな課題を抱えています。そこで本稿では、こうした現在までの経緯を確認した上で、基本法改正による債務上限額の厳格なコントロールを緩和して大幅な財政資金の投入を可能にした動きを踏まえ、連立協定から読み取れる新政権の今後4年間の社会保障改革の見通しについて考察してみました。


連立協定のうち、医療、介護、年金という主要領域についての合意事項の全文訳も添付したので20ページと少し分量が多くなりましたが、まさに時代の転換点(Zeitwende)に立って、これからのドイツの動向を読み取り、日本の針路についても一考する機会にして頂ければ幸いです。


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