比較社会保障研究室(コータローの社会保障塾)
Comparative Studies on Social Security Systems (CSonScubed)

2025年7月16日に「子育て家庭に対する経済的支援の政策選択ードイツの児童手当と税の児童扶養控除の一元化の過程から考えるー」を掲載しました


2025年7月16日に「子育て家庭に対する経済的支援の政策選択ードイツの児童手当と税の児童扶養控除の一元化の過程から考えるー」を掲載しました。
  < PDF版はこちら >
  < Word版はこちら >

ドイツでは、戦後のキリスト教民主/社会同盟(CDU/CSU)の保守政権下で、児童手当制度が創設され、税の扶養控除との2元制がスタートし、その後徐々に改善が図られてきました。これに対して、1969年に初めて政権についた社会民主党(SPD)は、その独自の家族観や社会観に基づき、1975年に税の扶養控除を全廃し、その大規模な増税財源を用いて、児童手当の抜本的な拡充を図りました。
その後1982年にCDU/CSUが政権復帰すると、少額の税の扶養控除を復活させるとともに、第2子以降の児童手当について所得制限を課しました。これにより児童手当が減額された家族が裁判に訴え、1990年以降、子を含む家族全員の最低生活費に対する課税を違憲とする連邦憲法裁判所の違憲決定が相次いで出され、1995年末までに新たな立法措置を講じるよう命じました。これを受けて1996年から、所得税法に基づく一律の児童手当給付と扶養控除の一元的な体系が導入され、以降、数度の政権交代を経ても、安定的な子育て家庭に対する経済的支援の中核的な制度として現在に至っています。


一方、日本では、2009年に政権に就いた民主党の公約に従い、「控除から手当へ」のスローガンの下、子ども手当が創設され、これに伴って16歳未満の子に対する税の扶養控除が廃止されました。しかし、子育て家庭への経済的な支援における児童手当と税の扶養控除ではその働き方が異なり、それぞれの基本理念、相互の関係がどうあるべきなのか、家族に対する所得課税の基本的なあり方と水準、さらに財源措置をどう講じるのかなど、基本的な論点が十分国民的を尽くされたとは言い難い状況です。このため、政権交代とともに子ども手当は廃止され、児童手当が復活しました。その後、少子化の進展への危機感から、児童手当は少しずつ改善が図られましたが、その都度、扶養控除は縮小されました。

2023年のこども未来戦略により、日本にしては大幅な児童手当の拡充が図られたことに伴い、政府は特定児童扶養控除の縮小を図ろうとしましたが、国民の批判や政党の反対に遭って、2年続けて見送りを余儀なくされています。
さらに、昨年来、いわゆる103万円の壁をめぐる議論などを通じて、世帯に対する課税のあり方や水準に関して大きな関心を呼んでいる中、今後とも扶養控除のあり方と適正な水準をめぐる議論はさらに厳しさを増してくることと思います。


そんな状況の下で、半世紀以上にわたってさまざまな価値観や政策選択に関して多くの論争が重ねられ、実際にも政権交代を通じて抜本的な制度改革が行われてきたドイツの経験や議論は、日本のこれからの子育て家族に対する経済的支援のあり方や水準、さらには先日の生活保護基準に関する最高裁判所判決を踏まえ、最低生活水準の算定の手続きや根拠とすべき統計データの取り方など、多くの示唆に富む議論が見られます。
ご関心があれば、問題意識をシェアして頂ければ嬉しいです。


“2025年7月16日に「子育て家庭に対する経済的支援の政策選択ードイツの児童手当と税の児童扶養控除の一元化の過程から考えるー」を掲載しました” への1件のフィードバック

  1. 子どもの人数に関係なく、18歳までの教育費(上限付き)、医療費を公的な手当として欲しいですね。食費も一人増えれば増えるので助成してくれれば、年収が低い方は助かりますよね。(収入に応じて)富裕層の方は 収入に対する税を増やす方が良いのかと考えます。

原田典子 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です