2025年8月14日に「医療情報と臓器の提供における「本人の同意」に関する考察ードイツの電子患者記録の設定と臓器提供におけるOpt-out方式への転換のための法律案をめぐる論争から考えるー」をHPに掲載しました。
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ドイツの公的医療保険における電子患者記録(ePA)の設定について、被保険者の申出方式(Opt-in)の下で1%にも満たない利用率だったものを、急速に普及を進めるために、2024年の医療デジタル化加速法によりOpt-out(異議申立)方式に根本的に転換した経緯や内容、これに対する反対意見や批判などについては、すでに拙稿「ドイツの医療デジタル化の新たな段階とその見通し」で詳しく論じました。
こうした高度に機微な個人情報の取り扱いに関するイシューについて、法律による強引なルール変更は、医療情報以外の分野にも安易に拡大されていく懸念を抱きました。今回、脳死臓器提供に係る本人の同意についてまで、これまでの本人の明示の同意の要件を法律変更によりOpt-out方式、すなわち生前に本人が明示で反対の意思表示をしていない限り、家族の意向とも関係なく、臓器摘出を可能とする法案が提出されたことを知りました。この法案は、連邦議会議員総数の3分の1近い超党派の連名により連邦議会に提出され、よもや可決か?と思われるほどの動向に接し、正直ここまで来たか!と、衝撃を受けました。
そこで、今回は、この法案の背景や経緯、内容を整理した上で、連邦議会総会で党議拘束なく、19名の議員が個人の信念と見識に基づき、ときに感情的なまでの激しい賛否の立場からの討論を行っている内容を分析し、近い将来、日本においても行われうる、このデリケートで深い倫理的課題をはらむテーマについて、問題提起をさせて頂きました。
併せて、この法案が廃案になったことに力を得て、電子患者記録のOpt-out方式の見直しを求める請願が連邦議会に提出されるなど、こちらも患者主権の確立や個人情報の保護、さらにはデジタルデータの安全性の問題など、批判や懸念は払拭されておらず、臓器提供と比較しつつ、医療情報など生体情報の提供についても、個人の同意と公共の福祉との適切なバランスのあり方も考える契機にできれば、と考えています。
さらに、こうした議論を契機に、今後、バイオテクノロジーやICT技術が自己目的的に飛躍的に発達する中で、どこまでが倫理的、法的、社会的に許されるのか、本来は政府から独立した中立的、学問的な機関が、医学、薬学、生命科学などの自然科学だけではなく、倫理学、宗教学、哲学、法学などの社会科学の専門家も交えて、社会に提案できるような仕組みを構築していく必要性を痛感しています。
この投稿をご覧になった方々の間でも、問題意識(危機感)を近くの人たちとの間で共有し、丁寧に議論を重ねて、社会に発信して頂けることを願っています。
