2025年10月18日「刑事司法福祉フォーラム・オアシス」の公開フォーラム(於:法曹会館)に日帰りで参加してきました。
このフォーラム・オアシスは、刑事司法を担う法務省(矯正局、保護局)・検察庁と福祉をつなぐネットワーク作りと交流を目的に、2016年11月に一般社団法人として設立されたものです。定款上は、その目的を、「罪を犯した生活困窮者または障害者の社会復帰の促進と犯罪被害者等への支援の充実を図るため、刑事司法関係者と社会福祉・医療関係者との協力関係を発展させること」としています。
その設立や運営を中心となって担ってきた法務検察OBの小津博司さんのご縁で私も設立当初から理事として関わりました。私たちはこの9年間、さまざまなフォーラムの開催や、各地の矯正施設(刑務所や少年院)や保護観察所、この分野で活躍している福祉施設などを訪問し、意見交換や注目すべき取り組みの紹介などを行ってきました。
今回の公開フォーラムは、「拘禁刑の施行と矯正の未来」というテーマで開催されました。これは、2022年6月13日に成立した「刑法等の一部を改正する法律」が3年間の準備期間を経て2025年6月1日に施行されたことを踏まえて設定されたものです。この改正により、明治40年の刑法制定以来、初めて刑罰の種類が変更され、従来の「懲役(刑務作業が必須)」と「禁固」の区別が廃止されて「拘禁刑」に一本化され、また、その目的も、個々の受刑者の特性に応じて、改善更生・再犯防止のために必要な作業を行わせ、または必要な指導を行うことが可能になりました。
フォーラムでは、最初に法務省矯正局長の日笠和彦氏から「拘禁刑時代を迎えて〜矯正職員のMVV〜」と題して総括的な説明とビデオメッセージを紹介頂き、続いて、矯正局の担当課長や官房審議官、熊本刑務所長から、それぞれお話しやビデオメッセージがありました。
さらに後半では、「知的障害受刑者処遇・支援モデル事業の立ち上げ」「障害のある受刑者の社会復帰に向けて」「福祉からの期待〜拘禁刑時代の矯正職員に向けて〜」というテーマ別トークセッションが行われ、矯正の現場から、そしてこれと協働している長崎県の南高(なんこう)愛隣会や、千葉県の地域定着支援センターの福祉のサイドからの率直な手応えと課題の共有が図られました。
今回のフォーラムで、改めて、矯正施設の現場がこれまでの1世紀に及ぶ長い処遇の蓄積とその基礎にある規律の重視から、受刑者の特性に応じた改善更生や被害者等の心情等の聴取・伝達、受刑者との対話の重視など、葛藤を抱えながらも新たな時代に求められる矯正の姿を求めて、各現場で真剣に新たな取り組みにチャレンジしている様子を知ることができ、強く感じるものがありました。
と同時に、こうした矯正の現場での真剣な改革への熱量に比べて、まだまだ福祉の現場での活動や受入れが限られていて、もっともっとこの問題が社会でも福祉現場でも広く認識され、積極的な取り組みの場を広げていく必要も痛感しました。このHPを訪問して下さる人たちにも、まだまだ一般の報道では伝えられることが少ない、こうした新たな大きな変革の動きに関心を持って頂ければ、と願います。
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